自然林や二次林ではなく、植栽された樹々についてのお話です。
公園や緑地帯、マンションや企業の敷地内、家など、様々に植物は植えられています。それぞれには植栽場所を決めた設計があり、その時に考えられた役割があります。
しかししばらくするとそれらの役割は忘れ去られ、酷い時はその用途を鑑みず管理されて無残な状態になることもあります。
我々、造園業では設計・施工と関われる物件だけではなく、誰かから引き継いだ緑地の管理をすることもしばしば。
その際にそれぞれの樹木の役割はなんだろう?と考えることは、その後の美しい緑地形成と維持に必要不可欠です。
例えば、生垣が植えられているとします。生垣の意味は境界を示す、目隠し、侵入防止、整然とした雰囲気をだす、幾何学的なデザイン要素など、ちょっと考えても様々な用途があります。しかも、目隠しであれば何から目隠しをするのか、どのくらいの高さが必要なのか、密度、品種はあっているのかなど、役割によって選択肢が異なってきます。
現在の高さが適切なのか、生垣の厚みはどうか、花や紅葉などの季節の変化は必要かなどを常に意識したり、施主様と話し合って決めるのが良いでしょう。
こういった樹木の役割を意識することは、日本では古くから行われてきました。
日本庭園の作庭の中に『役木』という言葉があります。庭の景観の趣を出すために植えられる庭木のことで、江戸時代の『築山庭造伝』になどに紹介されているそうです。これらは、特に決まったものではなく、長い歴史と経験のなか培われてきたものですが、現在も庭園作りの参考として継承されているとのこと。
正真木や景養木、見越しの松など、景色を形作ったり、風情を出すために植えられる樹木のことを言います。
樹木はただ植えられているだけではありません(そういう時もあるにはありますが・・・)
1本1本、真摯に向き合い、樹木の良さを最大限にいかしながら、役割をまっとうさせることを常に意識した緑地作りを一緒に目指す姿勢を大事にしていきたいと思っています。