アカンサスという植物をご存知でしょうか?聞き慣れなくても、教科書などに載っているギリシャ建築の多柱の上部のデザインで知らずに見たことがあるかも知れません。
Acanthusはギリシャ語の「Akantha(とげ)」が語源。
別名はハアザミといい、日本で一般的に流通しているアカンサスはアカンサスモリスと言うトゲ無し品種です。その他、約50種の種類があると言われています。
原産は地中海沿岸で、日本には大正時代に渡来しました。
古代ギリシャ建築のコリント様式の柱の頭(柱頭)にデザインされていますが、これは紀元前5世紀頃、ある彫刻家がコリントという場所でお墓にあったアカンサスの姿形からヒントを得て作ったためと言われています。
現在はギリシャの国の花になっています。
その後、近代に入り、モダンデザインのウィリアム・モリスがアカンサスをモチーフに多くのテキスタイルデザインを発表しました。
ウィリアム・モリスはデザインを勉強した人にはおなじみなのではないでしょうか。日本でも壁紙やカーテン等は大変人気があります。アカンサスモリスはウィリアム・モリスにちなんで名付けられた品種です。
開花時期は6月から7月にかけて。
華やかさはありませんが、独特の存在感を放ち、ガーデンの雰囲気をぐっとオシャレに見せてくれます。
背が高いものだと2m以上に花の茎を伸ばします。弊社で管理している離宮公園の花の庭園にも植ていますが、毎年見事な姿を見せてくれます(写真)。
花には小さな棘があり、咲き始めの柔らかい時は問題ありませんが、花終わりの乾燥した状態だと触ると痛くなります。ドライフラワーなどにする場合は注意が必要です。
花が枯れていくにしたがって、葉もどんどん枯れていき、夏は休眠状態になります。
ほとんどのアカンサスがこうした状態を見せることから、関西一円では夏に地上部があることはありません。
こうした秋に休眠する植物は少ないですが意外と身近にも。イチゴやアスパラガス、ガーデンシクラメンなども夏に葉が枯れて、冬に葉がこんもりと茂ります。夏に汚くなってしまった!と間違って捨ててしまわないように注意して下さいね。
秋になると綺麗な新芽が芽を出し、冬にはわっさりと美しい緑の葉が揃い、ボリュームのある姿になってそのまま越冬します。意外と耐寒性が強いのです。
1株で幅1~2mになることもあり、植える場所を選ぶますが、葉も美しいので地中海式の花壇には欠かせない存在です。
ボリュームがでるため、低木のように扱うこともできるのも嬉しい点です。
根が大変特徴的で、しなやかなゴボウのような根が縦横無尽に伸びていきます。
花を植え替えたり撤去したいと思っても切り残した根から発芽することもあり、一度植えると全ての撤去は難しくなるので植える時には場所を吟味する必要があります。
古くからデザイナーに愛されてきたアカンサス。乾燥に強く、暑さ・寒さにも強い、手がかからない植物です。
育てたことのない方はぜひ育ててみてみるといいと思います。