松クイ虫と一般的に呼ばれるのは、マツを枯らす原因となる「線虫(センチュウ)類」を運ぶ虫のことで、それはマツノマダラカミキリをさしています。
マツノマダラカミキリは、成虫は体長3cmほどで寿命は1年ほどです。北海道を除く各県で分布しています。夜行性のためほとんどいることはありません。
生態のサイクルは下記の通りです。
6月から7月にかけて羽化し、枯れたマツから8mm程度の穴をあけて外へ飛び出します。
その後、枯れていない健全なマツの1年から3年ほどの若い枝の表面をかじって栄養をとります。
7月から8月にかけて交尾を行い、枯れた直後のマツに卵を産み付けます。メス1匹につき約100個の卵を産むそうです。
卵は1週間で孵化し、幼虫となり、はじめは樹皮部分、成長に従って材部の表面を食べるようになり、さらにマツに穴をあけて部屋を作って、そこから出入りしながら材の表面を食べるようになります。
11月頃に部屋にこもって木くずを詰めて越冬します。
そして5月頃に繭になって20日間で成虫となるそうです。
松クイ虫被害とはマツノザイセンチュウが原因です。
マツノザイセンチュウがマツの体内に入って水分の通導を阻害し、マツを枯らしてしまいます。しかしマツノザイセンチュウ自体は松と松への移動は出来ません。
このマツノザイセンチュウを運ぶのは、マツノマダラカミキリというわけです。
マツノザイセンチュウは北アメリカ原産の線虫で、明治時代に梱包材と一緒に日本に入り込んだと言われています。
体長は1mm程度の小ささですが、生まれて親になるまで3~5日で、メスは100個以上の卵を産むために、莫大な増殖スピードで増えます。
増えたマツノザイセンチュウは、枯れたマツの中で越冬しているマツノマダラカミキリが羽化して成虫になるタイミングで体に乗り移ります。
マツノザイセンチュウを抱えたマツノマダラカミキリはそのまま外へ飛び立ってしまいます。
マツノマダラカミキリが健全なマツの表面をかじった樹皮の傷口から、マツノザイセンチュウはマツの材に侵入していきます。そして爆発的な増殖を起こし、マツを枯らしてしまうわけです。
秋になるとマツが葉を茶色くさせて枯れてしまうことがあります。
これはまさに夏にマツノマダラカミキリが運んだマツノザイセンチュウがマツの体内で増殖し、9月頃に一気に枯れてしまうわけです。
松クイ虫の被害に合わないため、また食い止めるには、5月から7月にかけての薬剤散布が大変重要です。また、12月から3月にかけて樹幹に注入する薬剤も効果的です。
時期をしっかり見極め、しっかりとした対策を行いましょう。
